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京都地方裁判所 昭和60年(わ)807号 判決

本籍

京都市東山区祇園町北側官有地

住居

同市左京区下鴨水口町六三番地の二

飲食店経営

加藤壽雄

明治四四年六月二二日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき当裁判所は検察官山田廸弘出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役六月及び罰金七〇〇万円に処する。

右罰金を完納しないときは金二万五〇〇〇円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。

右懲役刑については、この裁判確定の日から三年間その執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、自己の所有する京都市東山区新橋通大和大路東入二丁目清本町三七六番地の二所在の宅地・建物を昭和五九年六月二一日池田千鶴子に一億六、七七九万六、〇〇〇円で売却譲渡したことに関して右譲渡にかかる所得税を免れようと企て、全日本同和会京都府・市連合会会長鈴木元動丸、同連合会事務局長長谷部純夫、同連合会事務局次長渡守秀治、元同連合会乙訓支部長今井正義及び西村勝雄らと共謀の上、自己の実際の五九年分分離課税の長期譲渡所得金額は一億五、七八九万六、一〇〇円で、これに対する所得税額が四、四一六万九、九〇〇円であり、かつ右譲渡所得は五九年分として申告すべきところ、右譲渡時期は、同五八年一二月二二日で、買主は寺石源太郎であり、しかも株式会社ワールドが有限会社同和産業(代表取締役鈴木元動丸)から二億円の借入れをし、その債務について自己が連帯保証人となり、右ワールドが破産したことから右連帯保証債務を履行するために右不動産を譲渡し、その譲渡収入で同五九年六月二二日に一億四、五〇〇万円を履行したが、右ワールドに対する求償不能により同額の損害を被ったとして、同五九年六月二三日東山税務署に自己の五七年分分離課税の長期譲渡所得金額が八四〇万六、二〇八円、これに対する所得税が一七一万三、七〇〇円について申告漏れとなっていた旨の虚偽の五八年分所得税修正申告書を提出して前記宅地・建物の譲渡にかかる所得税について申告ずみであるように装うなどした上、同六〇年三月一五日、同市左京区聖護院円頓美町一八所在所轄左京税務署において、同署長に対し、自己の五九年分分離課税の長期譲渡所得金額はなく、総合課税の総所得は八〇万一、五四一円でこれに対する所得税額はない旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右の正規の長期譲渡所得に対する所得税額四、四一六万九、九〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目)

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書(五通)

一  被告人の検察官に対する供述調書(検第二八、二九号)

一  田代和子、丹羽徹、加藤嘉壽子、寺石源太郎、森岡富士雄、今井正義(五通)、西村勝雄(六通)、長谷部純夫(二通)及び鈴木元動丸(二通)の検察官に対する各供述調書(謄本)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書

一  同作成の証明書(二通)

(法令の適用)

判示所為 刑法六〇条、所得税法二三八条

刑の選択 懲役及び罰金の併科刑

労役場留置 刑法一八条

執行猶予 懲役刑につき同二五条一項

(裁判官 長崎裕次)

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